形而上と形而下と分解の話をします

年が明けて2022年。
家族と紅白を観て、昨年一人で過ごした時よりは年末年始感のある年末年始となった。

やはり時間というのはただ単に流れるものであり、人間が主体的に区切りそこに対して意味を付与しているのだと強く感じる。
季節だって地軸や地球における位置によるものであり、そこを掘り下げていくとどんどん科学的な方向に進み、区切られたもの・イベントに対しての情緒が分解されていく。

高校で地学を取らなかったのは宇宙・天体という自分から遠いものを紗幕がかかった状態のままにしておきたかったからであるし、大学で各理論に深入りしようとしなかったのは理論を先行させると自分から自分の考えが離れていってしまう、自分が思考する意味が失われる感覚があったからである。

自分の世界を小さく保つことで世界を大事にすることの健気さとはまた別軸のもの。

父親が自分がディズニーのスペースマウンテンに初めて乗る時に先に構造を教えてくれ、おかげで「あそこに骨組みがある!」的な少し穿った楽しみ方をした…ということもあるので、分解することによって別の楽しみ方ができることもあるのだが。

さて、人間がつくったこと、あるいは関わったことで情緒が生まれる…という点においては、場所もそうなのかと思う。

以前美術手帖ポッドキャストを聴いてみたところ、銀座という街の存在理由が人のいわゆる生活様式が変わったことで変化してきている、との話をしていた。言われてみれば人が生活を送るためにつくられた街であるので、ずっと絶対的にその場が保持されるという保証はないのだ。

大学生の頃遅く起きると家族が全員出掛けていて、普段の家とは違うように感じたのもここに通じる。人の気配が建物に及ぼす影響。家の場合は既に形として在るものなので、概念的な部分として。

家の例に近いものとして、劇場について。
劇場は客が入っていない状態では静まり返ったただの設備で、0番に立とうと思えばすぐに立てるしスポットライトを浴びようと思えばいくらでも浴びられる。
0番に立とう、スポットライトを浴びようと思っている人は、客が入っている状態で、本番というあの瞬間にそれを望んでいて、さらにそれが実現することに付随する、あるいはその実現によって立証されることに対して価値を感じているのであろうと思う。
物質的な舞台装置と精神的な舞台装置という2つが重なることによって生じる効果。

実体がないものをある集団において共有し、そこに同じような価値を見出しているというこの構図は興味深いものであるなと感じるし、そう感じる時点で自分は外部に立つ人間として存在している。

分解したりせずそのままを受け止めて盛り上がりに身を任せた方がよいのかもしれない…と思いつつ、ロシア語の教授が教えてくれたロシア映画の観方を思い出しつつ(大学という場でそれを教えてくれた教授はすごいと思いつつ)、それでも現時点では多くの場合自分の範疇で分解せずにいられない自分がいる。

それは例えば仕事などでは役立つけど、それ以前の自分にとってはどうなのだろうかと考えたりはするものの、自動化されている部分もあり、ある種武器として活用してしまっているそれを今から外すことに違和感があるのかもしれず。

分解することによって納得感を得られるというのは、所属の名称を付けられることで安心や連帯感を得ることに似ていて、その点で言うとあまりかっこよくはないなと思う部分もある。
まあその自己満足で終わってもいいのだけど、こちら側の満足感の話として。

ただし、構造の分析→それによりもたらされるもの、と思考がロックされているので、ここから一段先へ上がりたいという気持ちはありつつ。
これは向上心みたいな大したものではないのだけど、より正確な言葉が見当たらない。


また、関連する話として。
社会人になって、容姿を褒められたり軽く口説かれたりする機会が増えている。
相手にとって自分がそういった判定対象や恋愛対象や性の対象となりうるのであるということに今まで思いが及ばなかったため、なかなかの驚きをもって受け止めている。

容姿の良し悪しは主観によるものなので置いておくとして、気になるのは自分が評価されている内のどれくらいの割合が容姿という要素によって決定されているのかである。
自身に容姿による加点減点が働くと考えてもいなかったが、もし加点されていたのであれば自身の行動に対しての評価を下方修正する必要があると感じる。
勿論容姿に磨きをかけることで加点を狙う戦法もあると理解しているが、それを選択していないため余計に。

ちなみに容姿で言うと、自身は悪く言うと人にナメられる外見をしていると思う。
前に美術館で見た、濃い顔立ちで長髪パーマ、爪を暗い青に塗っていた男性になりたいと思いつつ、そこを目指しても到底到達できないことは自明なので無念。
せめて眉毛を濃くしたいので、これを含めた各SNSのユーザー名を眉毛関連にしている。言霊。